広島空港で発生したアシアナ航空162便着陸失敗事故を徹底考察する。

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2015年4月14日。
広島空港でアシアナ航空機が着陸失敗し、滑走路を外れかく座するという事故が起きました。

その後しばらく機体はかく座した滑走路脇に残されたまま。
何回も事故の様子を報道で見ましたが、撤去当日(2015年4月25日)、実際に広島空港に赴き状況を見てきた時のことを考察、解説しながらレポートします。

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事故現場に取り残された機体


まずは展望デッキから確認。
駐機しているANAのB787の後方。

クレーンで釣り上げる準備をされたアシアナ航空A320。

滑走路中央線(三本ライン)のすぐ横。
広島空港の滑走路の長さが3000mなのでその半分の1500m付近。

地図で表すとこんな感じ。

右側(R/W28)から着陸し、滑走路中央手前で滑走路を外れ、着陸と逆向きに停止したということになります。

空港は運用されており、平常どおり航空機の離発着が行われます。



可愛い塗装のゆめジェットも。

ゆめ×事故機という、なんとも言えぬ組み合わせ・・・。

展望デッキからも機体の損傷状況が確認できます。


思っていた以上に損傷が激しいという印象。

アシアナ航空162便の着陸を考察してみる

近づいてみるために、中央森林公園のレンタサイクルで空港外周を一周してみます。

まずは画像右側(1)のポイントへ。

着陸時に衝突したローカライザー

ここから見えるこの赤い設備。

これがアシアナ航空162便が着陸時に衝突したとみられるローカライザー(LOC)。

ローカライザー(LOC)

ローカライザー(LOC)とはILSの1つ。

ILSとは
たーびん
Instrument Landing Systemの略であり、計器着陸装置を意味し、
ローカライザー(LOC)グライドスロープ(GS)マーカービーコン(MB)またはT-DMEの3つの施設により構成されています。

画像:航空局

着陸する航空機は、ILSが示す3つの信号を受信することにより計器着陸することができます。

  • ローカライザーは滑走路への左右のズレ
  • グライドスロープは滑走路への上下(高さ)のズレ
  • マーカービーコンは滑走路までの距離

着陸機は視界不良時でもこのILSにより安全に滑走路上まで誘導されています。 
しかし、ほとんどの空港にはILSが片方の滑走路にしか設置されておらず、この広島空港にはR/W10着陸のみ設置。
その理由は後述します。

事故の原因

アシアナ航空162便はILSの設置されていないR/W28から進入し、ローカライザー等を破壊しながら無理やり着陸しました。

霧により急激な視程低下があったと言われていますが、ゴーアラウンド(着陸復行)してILSが設置されている逆のR/W10から着陸すれば事故は起きなかったはず。
しかも広島空港は霧が発生しやすい空港のため、ILSの中でも一番性能のいい「CAT-Ⅲb」が設置されています。

マキ美
CAT-Ⅲbってなに?
たーびん
簡単に言うと、この「CAT-Ⅲb」が設置されていることにより、着陸時に濃霧でほとんど滑走路が見えなくても計器により着陸できちゃうんです。
CAT-Ⅲbを設置している空港は国内でも羽田・新千歳・釧路・青森・成田・中部・広島・熊本の8空港だけ。 ほとんどの空港には「CAT-Ⅰ」が備わっており、広島空港のような濃霧が激しい空港にはより性能のよい「CAT-Ⅲ」が設置されているようです。
マキ美
じゃあ滑走路両側にILSを設置すればいいんじゃないの?
たーびん
…と思うかもしれませんが、地形等によりなかなか難しいのです。
ILSは約20㎞先まで電波を飛ばす必要があるので山等に遮られることと、予算の問題もあります。
ただし、ILSが設置されていない方向からの着陸は決して危なくありません!
パイロットはきちんと色んな場合の訓練をされています。

グライドスロープ(GS)

ILSの1つ、グライドスロープ(GS)。

赤と白に塗られた高さのある設備。
着陸してくる航空機に滑走路への上下(高さ)のズレを示しています。

進入灯(PALS)

今回は反対側の画像(2)のポイントへ移動します。

こちらはILS着陸装置を備えたR/W10側。
とてもとても立派な標準式進入灯(PALS)が設置されています。

進入灯(PALS)とは

  • 航空機が着陸のために空港の滑走路に進入する際に滑走路の中心線と進入方向を示す灯火の総称
  • 着陸しようとする航空機にその最終進入の経路を示すために進入区域内及び着陸帯内に設置する灯火

と、定義されています。

簡単にいうと、この進入灯は滑走路端から空港外に真っ直ぐずどーんと延びていて着陸する航空機に最終の進入経路を示すための灯火。
また、航空機が着陸時にある一定の高度でこの灯火の明かりが見えなければゴーアラウンドしなければならないんです。


このPALSはILS着陸装置を備えた滑走路方向に設置されており、下地島空港でいうと海にずどーんと真っ直ぐにのびているこれ。

下地島空港には両滑走路に設置されています。

羽田では4本全ての滑走路設置されています。
飛行機に乗っていても真上を通過しているのでなかなか見えないですよね。

事故機を間近で見てみる

機体を間近で見るため、レンタサイクルで空港の南側【C】サイクリングロードに来てみました。

この光景が目に入った瞬間、感じたこと。「ここで止まってよかったな・・・。

機体の10m先には崖。
この場所で停止できていなかったら・・・。
考えるだけで恐ろしい。

機体の破損状況

まずはウィングチップ。 着陸時、機体が左に傾いて地面に激突した影響で折れ曲がっています。

No.1エンジンはカバーが割れて外れ、水平尾翼は欠けているといった激しい損傷が感じ取れます。
 滑走路と停止位置の距離感。
滑走路からはかなり逸脱。
本来はもう少し近くまで行けたようですが、事故以来立入禁止のテープが張られています。
 この日の深夜に機体はターミナル側に移動された模様。
 今後同じような事故が起きないことを切に祈ります。

 

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